

2026/8/4
爪の先に三センチのアーチを架け、ラメを敷き、小さな石まで載せた女性を見た。財布から小銭がつまめない。スマホの入力にも難儀している。合理性という物差しを当てれば、これは端的に馬鹿げている。
中米の熱帯林に、目の覚めるような色をした小さなカエルがいる。青、朱、黄。森の中でこれほど目立つ配色は、捕食者に見つけてくれと言っているに等しい。実際そのとおりで、あれは「食えば死ぬぞ」という掲示板である。生き延びるために隠れるのではなく、生き延びるために目立つ。
人間の「馬鹿な格好」も、たいていはこの掲示板だ。三センチの爪は、この手で皿は洗いませんという宣言である。清朝の貴人が爪を伸ばし、ヨーロッパの淑女が肋骨を締め上げたのと同じ論理で、不便さそのものが身分証明になる。不便でなければ意味がない。誰にでもできることを誇る者はいないのだ。
つまり、他人が「馬鹿だ」と思った時点で、信号は正確に受信されている。こちらは嘲笑しているつもりで、律儀に読み取らされている。発信者の勝ちである。
ただし話には続きがある。中米の森には、毒を一滴も持たないくせに、毒ガエルそっくりの派手な色をまとった連中がいる。ただ乗りだ。危険なふりだけで生き延びる。
世に溢れる派手さの大半も、正直なところこちらだろう。中身の裏付けのない警告色。ローンで買った時計、実績の伴わない肩書き、プロフィール欄に並ぶ横文字。
だから笑うなら、派手さではなく毒のなさの方を笑うべきなのである。逆に言えば、本物の毒を持つ者は、多少馬鹿げた色をしていても一向に構わない。
そう考えて、私は自分の地味な指先を見る。慎み深いのか、それとも単に、掲げるべき毒を持っていないだけなのか。
筆者:
齊藤壮太
1985年生まれ、横浜・世田谷育ち。学生時代は體育會剣道部、體育會本部に所属。大学卒業後、大手総合商社の18年超のサラリーマン経験を経て、2024年に起業。不動産デベロッパー業務、アパレルOEM、自動車ディストリビューター・ディーラー、製紙事業、経営企画、ERP刷新PJに携わる中で所属した5つの組織が解体された。経営管理、予算・事業計画策定、原料調達、規程・制度導入、システム要件定義・PJ管理・推進、ロジスティクス管理業務など幅広い業務に従事。起業後は、日本食文化を世界に残すための取り組み、寺子屋講師、経営者のサポートなど幅広い実践経験を通じ、ハンズオンで柔軟に経営課題に真摯に取り組んできた。
編集後記
まずは経営企画らしい内容を投稿しようと考えていたが、今後も気づきや想いを積極的に発信して行きたいと思います。派手な色の一発目である。毒があるかどうかは、これから証明する。