

こういう人が、まわりに何人かいるはずだ。
健康診断はオールA。血糖値も肝臓も血圧も、きれいに基準内。ところが朝は起きられない。午後は眠い。夕方には頭が回らない。医者に行っても「異常はありませんね」と言われて終わる。
そして本人はこう結論づける。「歳ですかね」。
歳ではない。測っているものが違うのである。
健康診断は、病気を探す検査である
健康診断は、病気を探す検査だ。いま体調が良いかどうかを測る検査ではない。異常なしという紙は、元気であることの証明書ではない。
ついでに言えば、健康診断そのものにも、思われているほどの万能性はない。一般的な健康診断が死亡率を下げるという証拠は弱い、というレビューが出ている。
見つかれば、患者が増える
さらに厄介なのが、過剰診断の問題である。
有名な例が、韓国の甲状腺がんだ。超音波検診が広く行われるようになった時期に、甲状腺がんの発見数が爆発的に増えた。ところが、甲状腺がんで亡くなる人の数はほとんど変わらなかった。
つまり、がんになる人が増えたのではない。放っておいても害を及ぼさなかったものまで、見つかるようになったのである。見つかれば手術する。手術すれば一生薬を飲む。病気が増えたのではなく、患者が増えた。
誤解しないでいただきたいが、これは検診をやめろという話ではない。便潜血検査のように、死亡率を下げる証拠のはっきりした検診はある。
言いたいのは、検査の紙は、あなたの調子を教えてくれないということだ。
頼りにするのは、自分の感覚である
では、何を頼りにするか。
自分の感覚である。
試してみるといい。1週間、小麦(グルテン)を抜く。あるいはカフェインを抜く。そして寝起きの感じがどう変わるかを観察する。運動をした日としない日で、夕方の機嫌がどう違うかを覚えておく。
これは科学的な証明にはならない。被験者が1人しかいないからだ。
だが、あなたが経営しているのも、1つしかない会社である。
業界平均が何であれ、他社がどうであれ、最後は自分の現場の数字で決める。身体も同じだ。客観的な情報は大事だが、それは参考値であって、判断ではない。決算書だけを見て現場を見ない経営者が失敗するように、検査結果だけを見て自分の感覚を無視する人は、たいてい手遅れになってから気づく。
だるさの正体は、発電所にある

さて、ここからは、その「だるさ」の中身に踏み込みたい。
人間はミトコンドリアという小さな発電所でエネルギーを作っている。ここが動かないと、寝ても回復しない、食べても力が出ない、という状態になる。
この発電所の仕組みを、ざっくり見ておく。
まず、食べた糖が細胞の中で分解され、ピルビン酸という形になる。ここまでは発電所の外の作業だ。石炭を門の前まで運んだ状態と思えばいい。
次に、ピルビン酸が発電所の中に入る。ここで門番をしているのがビタミンB1である。B1がないと、この門が開かない。燃料は入り口の前に積み上がったまま、中に入れない。倉庫の前でトラックが渋滞している状態だ。
中に入った燃料は、炉で燃やされる。このとき電子を運ぶベルトコンベアの役をするのが、ビタミンB2やB3から作られる運び屋である。運び屋が足りなければ、炉に火は入っていても電気にならない。
そして、できあがったエネルギーはATPという形で取り出される。ここで必要になるのがマグネシウムだ。ATPはマグネシウムと組んで、はじめて使える形になる。発電しても、プラグがなければ機械は動かない。
亜鉛も、こうした工程を動かす酵素の材料として広く使われている。
つまり、こういうことである。燃料をいくら入れても、鍵と運び屋とプラグが足りなければ、電気は作られない。
たくさん食べているのに元気が出ない人は、燃料不足ではなく、部品不足かもしれない。
好きな食事はそのまま、足りない部品だけ足す
ここで、このシリーズの軸に戻る。
好きなものを食べて、働き続ける。それがこの連載の主張だ。禁欲を勧めるつもりはない。
ただ、正直に言えば、毎日食べたいものの中に、亜鉛もビタミンDもマグネシウムもビタミンB群も必要量きちんと入っている、ということはまずない。特にビタミンDは日光を浴びて作られる部分が大きく、会議室と車と自宅を往復している人は構造的に不利である。
だからこそ、こう考えたい。好きな食事はそのままでいい。足りない部品だけ、サプリで足す。
これが一番楽で、一番続く。我慢を前提にした健康法は、経営者の生活では絶対に続かない。
飲む前に、測る
ただし、順番がある。
飲む前に、測ることだ。
血液検査は身体の決算書である。年に1回でいい。何が足りていて、何が足りていないかを数字で見る。そのうえで、足りないところにだけ入れる。医師に相談して決める。売れない原因を調べずに広告費を積む会社を我々は笑うが、自分の身体については、多くの人が「なんとなく効きそう」で毎月払っている。
サプリの買い方

買い方にも触れておく。
サプリは、含有量あたりで見ると価格差が非常に大きい。日本国内で売られている製品には、含有量が少なく価格の高いものが混じっており、飲んだ気分だけ得て何も満たせていない、ということが起こりうる。
米国には第三者認証の仕組みが発達していて、USPやNSFといった認証マークのついた製品は、表示どおりの量が入っているかを外部が確認している。選択肢として知っておく価値はある。
ただし、米国だから安心という話でもない。あちらの制度も、有効性を国が審査しているわけではない。見るべきは国名ではなく、認証マークと含有量である。
そして最後に、これも書いておく。サプリは薬ではない。薬を飲んでいる人には相互作用があるし、脂溶性のビタミンのように摂りすぎが問題になるものもある。多く摂れば効く、は栄養でも経営でも成り立たない。
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筆者:
齊藤壮太
横浜・世田谷育ち。学生時代は體育會剣道部、體育會本部に所属。大学卒業後、大手総合商社のサラリーマン経験を経て、2024年に起業。20年近い商社勤務の中で、不動産デベロッパー事業、アパレルOEM事業、自動車ディストリビューター・ディーラー事業、製紙事業、経営企画、ERP刷新PJ統括、デジタル推進組織に携わり、うち所属した5つの組織が解体された。従事した業務は、経営管理、予算・事業計画策定、M&A・PMI推進、原料調達、規程・制度導入、システム要件定義・PJ管理・推進、ロジスティクス管理業務など多岐にわたる。起業後は、日本食文化を世界に残すための取り組み、寺子屋講師、経営者のサポートなど幅広い実践経験を通じ、ハンズオンで経営課題に真摯に取り組んできた。
編集後記
血液検査よりも、体感の方が大事。異常は必ず身体のどこかに出る。アトピーやニキビも意味がある。言葉にならないメッセージに気づく能力も、経営の役に立つ。
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