

前稿「新規事業を起こすには① - 材料は揃っている。新たな火をつける人がいない。」で、新規事業に足りないのは材料ではなく人間だと書いた。今回は、その人間の顔ぶれを具体的に並べる。
6人いる。前半の4人が見つける人、後半の2人が形にする人である。
1人目。社内では煙たがられているが、社内だけの常識に囚われていない人間。
会議室の空気を悪くするタイプだ。「それ、本当に必要ですか」と平気で聞く。同席者は全員うんざりする。だが冷静に考えてほしい。社内の常識は、社外では一円にもならない。空気を読める人しかいない部屋から、新しいものが出てきた例を私は知らない。
2人目。みんなが常識だと信じて疑わない不条理や不便に、我慢がならない人間。
「昔からこうです」と言われて納得できない人である。職場では確実に面倒くさい。だが、世の中の不便のほとんどは、この種の人が一つずつ潰してきた。我慢強い人は、我慢してしまうので何も直さない。
3人目。仕事には何の役にも立たないファッションや芸術に、興味とセンスがある人間。
これが一番誤解される。役に立たないものを好きでいられる人だけが、まだ誰も欲しがっていないものに気づける。役に立つものだけを見てきた人が見つけられるのは、すでに誰かが売っているものだけだ。市場調査で出てくるのは、いつも過去である。
4人目。顧客の側に立ちすぎて、社内ではダメな例とされている人間。
自社製品の欠点を、客に先に言ってしまう営業。社内では問題児として名前が挙がり、客からは名指しで指名される。社内評価と顧客評価が逆転している人は、たいてい何かを正しく見ている。
ここまでが、見つける人だ。だが感性だけでは商売にならない。ここから2人。
5人目。その気づきを受け取って、実務経験に裏打ちされた実現可能性を見抜き、収益化のモデルに組み立てられる人間。
ここが欠けると、面白い話をするだけの集団で終わる。飲み会としては最高だが、決算書は1円も動かない。
6人目。実行にあたって、社内外の人を惹きつけ、その気にさせられる人間。
新規事業は必ず途中で嫌われる。既存部署の予算を食い、既存のやり方を否定するからだ。それでも人が集まってくる引力を持つ人がいる。理屈ではなく、なぜか手伝いたくなる人である。
さて、ここで大事な蓋をしておく。
変わり者を集めれば新規事業ができる、という話ではない。
変わり者の9割は、ただの変わり者である。これは断言していい。見分ける基準は一つだけあって、実務で数字を作った経験があるかどうかだ。感性だけの人は、放っておくと評論家になる。それも社内で最も扱いにくい種類の評論家に。
5人目の存在が決定的なのは、そのためである。感性の人と実務の人が両方いて、初めて火がつく。片方だけなら、片方は騒音でしかない。
ところで、この6人を社内から探すのは、難しいを通り越してほぼ不可能だ。野球でいえば、4番でエースでキャプテンで、ついでに監督もできる人を探しているようなものである。
だが、しかしである。
ごく稀に、これを1人で全部持っている人間が存在する。
そして、そういう人間はたいてい会社のメインストリームにいない。
当然だ。ここまで挙げた資質は、どれも「本業を安定して回す」という評価軸では減点にしかならない。空気を読まない。前例を疑う。仕事に関係ないものに詳しい。客に肩入れしすぎる。全部、人事評価で低い点がつく項目である。
つまり、我々の評価制度は、新規事業に必要な人材を正確に見つけ出して、正確に脇へ寄せている。性能が悪いのではない。むしろ優秀すぎるのだ。
誤解しないでほしいが、メインストリームの人が無能だと言っているのではない。彼らは本業を回すために最適化された、極めて有能な人たちである。ただ、最適化された人に、最適化を壊す仕事を頼むのは無理がある。役割が違うだけの話だ。
では、その人たちをどう見つけ、誰が使うのか。次稿「『そうせい』と言える人が、社内にいるか。」に書く。
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筆者:
齊藤壮太
横浜・世田谷育ち。学生時代は體育會剣道部、體育會本部に所属。大学卒業後、大手総合商社のサラリーマン経験を経て、2024年に起業。20年近い商社勤務の中で、不動産デベロッパー事業、アパレルOEM事業、自動車ディストリビューター・ディーラー事業、製紙事業、経営企画、ERP刷新PJ統括、デジタル推進組織に携わり、うち所属した5つの組織が解体された。従事した業務は、経営管理、予算・事業計画策定、M&A・PMI推進、原料調達、規程・制度導入、システム要件定義・PJ管理・推進、ロジスティクス管理業務など多岐にわたる。起業後は、日本食文化を世界に残すための取り組み、寺子屋講師、経営者のサポートなど幅広い実践経験を通じ、ハンズオンで経営課題に真摯に取り組んできた。
編集後記
「あいつは扱いにくい」という評価は、扱う側の技量の話であることが少なくない。少なくとも、扱いやすさは資質の名前ではない。
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新規事業① - 「材料は揃っている。火をつける人がいない。」――なぜ人の話にならないのか

新規事業③ - 「『そうせい』と言える人が、社内にいるか。」――その6人を誰が動かすのか

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